猫用ワクチンの種類

抗原による分類

生ワクチン

生ワクチンとは、抗原として、病原体(ウイルスや細菌など)を弱毒化(弱くした状態)して作られたワクチンのことを指します。この弱毒化された病原体は、体内で感染を起こすことなく、免疫系がその病原体に対して免疫反応を起こし、将来的に同じ病原体に感染した際に速やかに対処できるように抗体をつくります。

特徴

  • 生きた病原体を使用: 生ワクチンは、病原体を生きたまま使用していますが、病原性(病気を引き起こす能力)は大幅に低下しています。そのため、実際の感染を引き起こすことなく免疫をつけることができます。
  • 強い免疫反応: 生ワクチンは、免疫系が本物の病原体と似たような反応をするため、免疫反応を引き起こします。そのため、同じ回数の接種で長期間の免疫が得られることが多いです。
  • 自然に近い免疫反応: 生ワクチンは体内で増殖するため、自然感染に近い形で免疫が形成されます。その結果、細胞性免疫(T細胞による免疫)と液性免疫(抗体による免疫)の両方が誘導されます。

利点

  • 1回の接種で長期間の免疫を得られることが多い。
  • 強い免疫を誘導し、持続性が高い。
  • 自然感染に似た免疫応答が得られるため、効果が高い。
  • 添加剤であるアジュバンドを使用していない場合が多いので注射部位肉腫のリスクが小さい。

欠点

  • 免疫が弱い猫へのリスク: 生ワクチンは免疫抑制状態にある猫(例えば、エイズなど重篤な病気にかかっている人や免疫抑制薬を服用している猫)には使用できない場合があります。病原体が増殖するため、通常は安全でも、免疫が弱い人にはリスクがあるためです。
  • 効果が比較的大きい反面、副反応も出やすい傾向にあります。
  • 保存・管理が難しい: 生ワクチンは保存方法が厳密で、冷蔵や冷凍での保管が必要です。高温や光に弱いため、輸送や保管に注意が必要です。


不活化ワクチン

不活化ワクチンは、抗原である病原体(ウイルスや細菌など)を化学処理や熱処理などで「不活化(殺菌)」して作られたワクチンです。病原体の成分は残っていますが、生きていないため、体内で増殖することはありません。これにより、病気を引き起こすリスクを避けつつ、免疫系が病原体に対して免疫反応を起こし、感染に備えることができます。

猫用の不活化ワクチンの特徴

  • 安全性
    不活化ワクチンは、病原体が生きていないため、生ワクチンよりも安全性が高く、免疫抑制状態にある猫や病気を持っている猫にも使用しやすいです。免疫系が弱い猫に対しても、感染のリスクをほとんど伴わずに免疫をつけられるという点が魅力です。
  • 比較的に効果が小さい
    免疫が持続する期間が生ワクチンよりも短いことがあり、定期的な追加接種(ブースター接種)が必要となります。
  • 保存が比較的容易
    生ワクチンと比較すると、保存や輸送の際の温度管理が比較的容易であるため、取り扱いやすいという利点があります。


不活化ワクチンのメリットとデメリット

メリット

  • 安全性が高く、特に免疫が弱い猫や子猫にも適用しやすい。
  • 病原体が増殖しないため、感染リスクがない。
  • 比較的に副反応が少ない

デメリット

  • 免疫効果が生ワクチンほど強くなく効果の持続期間も短い
  • 効力を高めるために添加剤としてアジュバンドを使用してる場合が多く、アジュバンドは注射部位肉腫の原因とされる。

培養細胞による分類

猫腎臓細胞で培養したワクチン生産効率を高めるためほとんどの猫用ワクチンは猫腎臓細胞を使って培養する製造方法を使っています。しかし、猫腎臓細胞で培養したワクチンは、腎臓を攻撃する抗体を作る可能性があり、猫の慢性腎臓病の原因の一つとなっています。猫腎臓細胞以外で培養したワクチンこれはほとんどありません。確認できたのはノビバックのTRCATという三種混合ワクチンだけです。