AIMを活性化できない猫の遺伝特性

猫AIMの活性化とL-シスチン、グルタミルシステイン、グルタチオンとの関係

1. 猫AIMの特徴と腎不全の問題

  • AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage):体内で不要な細胞や細胞由来のゴミ(DAMPsなど)を除去するタンパク質。
  • 猫AIMはIgMと強固に結合
    • 通常、腎障害などが生じた際にはAIMが単独(フリー体)で機能し、ゴミ除去を行う。
    • しかし猫では、AIMがIgMからなかなか解離せず、活性化されにくいために腎臓にゴミが蓄積しやすい。
  • 結果:ほとんどの猫が慢性腎臓病を患い、多くが腎不全に至る大きな要因となる。

2. L-シスチンによる猫AIMの部分的解離と活性化

  • 宮崎徹先生の研究:猫血液中にL-シスチンを加えると、AIMがIgMからある程度解離し活性化することを発見。
  • 作用機序
    • AIMとIgMの2か所の結合のうち、ジスルフィド結合を化学的に切る作用がL-シスチンにあると推測。
    • これにより、ヒトやマウスに比べ解離しにくい猫AIMでも一定の解離が起こり、活性化が可能になる。
  • 期待効果
    • 腎臓へのゴミの蓄積が少量の段階で、L-シスチンを定期的に摂取してAIMをコンスタントに活性化し続ければ、腎臓病の予防や病態悪化の抑制につながる可能性がある。

3. 他のアミノ酸(-グルタミルシステイン、グルタチオン)との比較

  • -グルタミルシステイン
    • ドリアンから抽出される物質で、AIMを活性化する効果が高いとされる。
    • しかし、商業生産されておらず入手困難。
  • 還元型グルタチオン
    • 分子構造が-グルタミルシステインに類似し、AIM活性化が期待できる。
    • 日本では医薬品扱いでありサプリとして流通していないが、海外ではサプリメントとして扱われ、個人輸入が可能。
  • シスチン(L-シスチン)
    • すでに人用サプリとして市販されている。
    • 猫AIMを活性化する力は-グルタミルシステインやグルタチオンより弱いが、入手性の観点から次善策として使用されていると推測される。

4. 特許情報

  • 特許特開2021-75545(宮崎徹先生他)
    • 「血中フリー体AIM増加用組成物」として、-グルタミルシステインやグルタチオン、シスチンなどが記載。
    • シスチンより-グルタミルシステインやグルタチオンのほうがAIM活性化効力が高いと読み取れる。

5. まとめ

  • 猫の腎臓病問題:猫AIMがIgMと強固に結合し、活性化が阻害されるため腎臓にゴミが蓄積しやすい。
  • L-シスチンの意義
    • ジスルフィド結合を切ることでIgMからAIMを部分的に解離し、腎臓のゴミ除去を助ける。
    • -グルタミルシステインや還元型グルタチオンほどの強力さはないが、現実的なサプリとして期待される。
  • 実用面での課題
    • もっと強力な-グルタミルシステインやグルタチオンは、日本ではサプリ扱いでなく医薬品扱いの場合が多い、または生産流通が限定的。
    • そのため、市販サプリとしてはシスチンが使われているケースがある。

これらの知見から、猫の腎臓病リスク軽減や進行抑制の一環として、L-シスチンなどのアミノ酸を活用したAIM活性化戦略が検討されている。